イラストレーター秋山亜軌の日記を中心としたブログです。イラストレーターとしての活動報告をはじめ、美術や映画、音楽の話、興味のある出来事など、幅広い話題を独自の意見を絡めて執筆しています。

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フィリップス・コレクション展

先日、六本木ヒルズにある森美術館フィリップス・コレクション展に行ってきました。
いつも通り会期終了間近に慌てて行ったのですが、もうサイコーでした。僕は日本に滅多に来ないスペインの画家、エル・グレコの絵がお目当てだったのですが、他にもいい絵を挙げたらキリがないってくらい、全体的に充実した素晴らしい美術展でした。TBSビジョン主催なんですね。
以下、展覧会のレヴュー要約です。

ルノワール「舟遊びの昼食」

ダンカン・フィリップス(1886-1966)はアメリカの裕福な家庭に生まれ、エール大学在学中に美術史を学び、多くの美術評論を執筆しました。
ヨーロッパを幾度も旅行し、絵画作品の収集を行ないます。自身のコレクションを「アメリカのプラド美術館」にすることを目指し、世界有数の個人コレクションを築き上げました。
1930年に邸宅を美術館として公開し、現在では所蔵品は約2400点にのぼり、世界中から美術ファンがやってくるようになります。
今回の美術展では、ダンカンがコレクションの中核にすべく購入したルノワールの「舟遊びの昼食」をはじめ、エル・グレコ、ゴッホ、セザンヌ、ピカソ、マティスなどの絵画56点とロダン、ジャコメッティらの彫刻4点を一挙に公開しています。(美術館改修のため。世界中を廻り、日本にもやってきたのです。)
17世紀から20世紀に至るまでの西洋美術の流れを実体験できる、まさに「アートの教科書」と呼ぶにふさわしい展覧会と云えます。

とここで感想に戻りますが、個人コレクションの美術展というとすごく収集家の趣味がはっきりと表れるので、いい場合と悪い場合があるのですが、今回は前者です。ダンカン・フィリップスさん、すごく趣味がいいです。
レヴューにはありませんが、他にも、ドラクロワ、アングルの小品やゴヤ、コロー、クールベ、マネ、ルソー、シスレー、ドガ、ルドン、シャヴァンヌ、ゴーギャン、ココシュカ、クレー、カンディンスキー、それから特にドーミエやボナールの油彩にはかなり力を入れて集めていたようで、大作も数点ありました。幅広く美術史の流れを考慮して集めているのですが、好きな画家はすごくはっきりしている、そんな印象でした。
しょっぱなから、エル・グレコとゴヤがお出迎えで、この対比すごくよかった。コントラストが効いていた。「悔悛の聖ペテロ」という同じテーマで描かれた絵なのですが、両者とも確固たる自分があり、特異な人生を歩んだ二人の絵なので、存在感が凄いんです。とにかく強い絵だなあ、と思いました。グレコは引き伸ばした人物にしなやかな筋肉の描写、激しいコントラストに、劇的な構図。一方ゴヤはいぶしぎんの渋い色使いに、岩のような人物の輪郭、不動の三角の構図。男らしい二人の対峙でした。

エル・グレコ「悔悛の聖ペテロ」

アングルは意外だったんだけど、部分によってはけっこう盛り上げて描いてるんですね。
コンスタブルの絵は初めて見たのですが、具象と抽象の間をとったような絵で、ギリギリ具象の形を保っているような面白い絵でした。
それからドーミエのこれまた強い油彩画。こんなにドーミエの絵に力をいれている収集家も珍しいと思うのですが、ドーミエというと新聞の風刺画が有名で、(この人は本当は油彩を描きたかったのですが、お金が無くて仕方なく風刺画を描いて食を繋いでいた。)他の美術館で見るドーミエの絵というと、小品が多いのです。それで「蜂起」という大きい絵があるのですが、こういう大作でこそ、ドーミエは活きるな、と思いました。この人の風刺画で培った、とらえどころのない線は素晴らしいです。僕はロートレックの線にも匹敵する上手さだと思っています。
マネの中間色のない「スペイン舞踊」という絵も異色で面白かった。
モネは二点しかないというのになんだかんだいって色彩センスではダントツ一番抜けていて、圧倒されてしまいます。この人ほど一般的に好かれている画家も居ないだろうし、もうさんざん見てきた絵なのに見るたびに新鮮さがある。近づいてみたり、離れてみたりでの驚きっていうのはある種トリックアートにも通じるものがあり、色彩の魔術師という表現がぴったりです。色に対してのこだわりには神がかったものがあって、反省に至ります。これくらい素晴らしい色へのこだわりがほしいですね。

モネ「ヴェトゥイユへの道」

ボナールもいい色彩センスを持ってるんだけど、モネと比較してしまうと物足りなさを感じるのは僕だけでしょうか。
失明寸前のドガの絵は画家としての覚悟というか、魂を感じる強さがありました。
そして今回の美術展のメインを飾るルノワールの「舟遊びの朝食」。一画区切って、ドドーンと展示してあります。絵の前には人だかりが。130.2×175.6cmという大作です。すごい。はっきりいってルノワールの絵でここまで感動したのは初めてのことでした。
ルノワールというとキャンバス地が見えていたり、やたらと薄い印象で本物を見ると、今までどちらかというとがっかりすることが多かったんです。印刷の方がいいと思うくらいで。でも今回の絵はすごく力の入った迫力のある絵でした。一人一人のポーズや華やかな色使い、透き通るようで肉の質感たっぷりなこれぞルノワールという健康的な肌、お酒のボトルやグラス、果物など小物の一切手抜きなしといえるような的確な描写。風俗や習慣を写し取るという意味でもとても興味深かった。絵を見つめていると、絵一枚の中に世界が広がっていて、まるでその中に入っていけそうな雰囲気があるんですよ。絵のどこを切っても絵になるというかとにかく、ルノワールという画家の本質はこれなんだ!と目から鱗が落ちる気分でした。今回一番感動した絵でした。「ムーランドラギャレット」に匹敵する絵ですよ。これは。
あとゴッホもよかったし、セザンヌも大好きだな、セザンヌの絵って深い。空気を変えるんですよね。どこにあってもどんな気持ちで見ても、そこだけセザンヌの時間になる。他とは一線を画す、そういう絵ですね。人物であろうと、静物であろうと、風景であろうと、絵を構成する一つの道具として捉えていて、単純な感情に流されない硬質な芸術哲学がある。感傷的な気持ちに付き合わない硬派な絵というか。そんなに大きな作品はないのに思った以上に圧力を感じるんです。色も構図も形の捉え方も全部勉強になる。唸って見てしまいます。一番お手本にしたいのはセザンヌだったりします。さすが近代絵画の父。

セザンヌ「ザクロと洋梨のあるショウガ壺」

ゴッホ「道路工夫」

クレーやカンディンスキーは装飾やデザインとしてみると面白いですね。主張が少ないから部屋に飾るのはこういう絵がいいですね。ジャコメッティの彫刻は面白いですね。笑いそうになった。でも好きです。
一周目は裸眼で回って、(印象派は目のピントが少しずれてるくらいの方がより真実味を帯びて見えるんです。目の錯覚を利用した絵なので。)二周目は気に入ったものだけを眼鏡かけて細部までじっくりと見ました。すごく勉強になったし、純粋に楽しかった。作品の数も多すぎず、少なすぎず、ちょうどいいし見せ方もよかった。森美術館は帰りに土産屋を三つくらい通らないと帰れないのが疲れるけど、それ以外は最高でした。
本当に素晴らしい美術展で今年見たものでは一番よかったです。

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  1. 2005/09/07(水) 21:01:53|
  2. 美術展|
  3. トラックバック:4|
  4. コメント:6
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コメント

TBありがとうございました

はじめまして。
私もルノワールの絵を見て感動したのはこの絵が初めてかもしれません。
ダンカンさんが本当に趣味のいいコレクターだということがよくわかる展覧会でしたね!
  1. 2005/09/08(木) 02:40:08 |
  2. URL |
  3. リカ #-
  4. [ 編集]

はじめまして。

はじめまして。
リカさんのブログはとても読みやすく書かれてあって、
押し付けがましくないのが好印象で、TBさせて頂きました。
ルノワールよかったですね。僕も普段から好きなわけじゃないので驚きでした。
ココシュカやルドンもよかったと思います。
あれだけたくさんの名画を網羅していると宣伝する側も何をウリにしていいのか、大変ですね。
  1. 2005/09/08(木) 22:38:04 |
  2. URL |
  3. 秋山亜軌(管理人) #SecOoZh.
  4. [ 編集]

TBありがとうございました。

秋山様
はじめまして、アイレと申します。TBありがとうございました。
秋山様はとても詳しくレビューをされていらっしゃいますね。
絵に対する思い入れがこちらにも伝わってきます。
私はフィリップス・コレクションの「色」の美しさに感銘を受けました。
特にマチスの黒の背景に心揺さぶられました。
  1. 2005/09/08(木) 23:34:58 |
  2. URL |
  3. アイレ #-
  4. [ 編集]

はじめまして。

はじめまして。アイレさんはとても美術通だとわかるような
目のつけどころが素晴らしいレヴューをお書きになっているのでTBさせて頂きました。
要点がまとまっていてとても読みやすかったです。
私ももっと上手く伝えられるといいのですが、文章にすると難しいですね。
アイレさんが大変力を入れて書かれているモロー美術展にも近々行こうと思っています。
これからも宜しくです。
  1. 2005/09/09(金) 21:25:15 |
  2. URL |
  3. 秋山亜軌(管理人) #SecOoZh.
  4. [ 編集]

こんばんは

TBありがとうございました。

アングルの作品はこってりしていて
あまり好きではないのですが
このコレクションのアングルは別で
一目惚れしてしまいました。

また、お書きになられていいらっしゃるとおり
セザンヌの作品の力が圧倒的でした。
あそこだけ空気違いました。
「ローヴの庭」なんてどうやったら描けるのか不思議でたまりません。
  1. 2005/09/09(金) 22:30:41 |
  2. URL |
  3. Tak #JalddpaA
  4. [ 編集]

こんばんわ。

お久しぶりです。
アングルは印刷物とかなり違う印象だったので驚きました。
セザンヌはいつも感服させられるのですが、今回もすごくよかったですね。
「ローヴの庭」という作品、初めて見ました。
セザンヌの作品はいつも完成されたものが多いのですが、この絵はいい意味で未完成で
その分、セザンヌの風景の捉え方の骨格のようなものが読み取れる気がしました。
変な言い方をすると、セザンヌっていうサイトがあるとすると、この絵はそのソースに当たるような絵だな(笑)と思いました。
この絵にキュビズムという未来が隠れていると思うと感慨深いものがありました。
  1. 2005/09/09(金) 23:16:12 |
  2. URL |
  3. 秋山亜軌(管理人) #SecOoZh.
  4. [ 編集]

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