イラストレーター秋山亜軌の日記を中心としたブログです。イラストレーターとしての活動報告をはじめ、美術や映画、音楽の話、興味のある出来事など、幅広い話題を独自の意見を絡めて執筆しています。

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生誕100年記念ダリ回顧展

●1月2日 生誕100年記念ダリ回顧展
1月2日、再び上野へ。この日はダリの回顧展を見るためにやってきました。去年見たいと思っていた美術展で、見られなかったのがダリ展とエッシャー展だったので、年始になんとしてもこの2つを見ておきたかった。まずは会期が4日までのダリ展から制することに。

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↑入り口からダリが不意打ち気味にお出迎え。

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↑「やれんのか?」挑発的に難問を投げかけるような表情に高揚感は膨れ上がる。

20070103210303.jpg

↑会場は長蛇の列。90分待ちの大盛況です。

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↑見てくださいよ。この人の列。

20070103210414.jpg

↑さすがダリ。人気者です。とりあえずこんなに絵を見るために並んだのは初めてです。藤田の時より混んでました。

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↑なんとなく田中角栄時代にモナリザが日本に来た時の映像を髣髴とさせる。テレビでしか見たことないけど。

僕の中でダリは1人の画家という以上に、セザンヌと並んで「近代絵画の父」という見方をしてしまいます。ダリと云えば天才や狂気というフレーズがまず取り沙汰されますが、先人の絵画の流れを完全に理解し、技術をマスターし、リスペクトを忘れていない人だということも重要でしょう。だからとても学べる部分が多いのです(ミレーの晩鐘をはじめ、他の人の絵画で発見してくれたことも非常に多い。)。
古典から近代までの絵画を分解し、技術や技法、様式を用いりながら、わかりやすく誇張したり、最新の科学と組み合わせたり、時には別の1面をフィーチャーしたり、その多彩さには驚かされます。しかもそれが単なる模倣で終わらずに、自分の表現まで昇華させているところがすごいのです。
ほとんどの作品は画集で見たものだったので、それらを生で見たらどういう感動があるんだろう、当初の鑑賞のポイントはそこに持っていったつもりでした。下地の感触はどんなか、タッチの付け方、色の置き方はどんなか。でも実際ダリの絵を目の当たりにすると、その複雑で奇妙な世界観に魅せられてしまって、テクニックの部分にはあまり目が行かなかったですね。会場がすごく混んでたのもあり、あまりニュートラルな気持ちで見られなかったのもあるけど(はみ出しちゃいけない線があるじゃないですか、そこに人に押し出されて入ってしまうくらいの大混雑、狂乱ぶりだったのです。)自分の中で、頭で考えるより、感覚で味わう種類の美術展だと鑑賞ポイントの切り替えがありました。
もちろん表現に幅のあるダリだから、技術面でうならされた作品もありました。それが「パン籠」という作品。この作品が僕の中では1番「本物」を見ることによる感動は大きかったな。他を寄せ付けない神の域に達した技術によって紡ぎ出された作品だと思いました。フェルメールのように静謐な世界を感じます。そこにはただのパンと籠を描いただけなのに、神々の世界を匂わせる。宗教的な観念までを描き出している。

pankago.jpg

↑「パン籠」。シュールレアリズムの作品群の中で一際光る、ダリの高度な技術力を証明するような作品。でもこれも写実を凌駕するっていう意味ではシュールレアリズムだと思いました。それくらいの肉薄したリアリティーをこの絵は持っています。写真やスーパーリアリズムでは描けないリアリティーがこの絵にはあります。

ダリのたくさんの無意識のイメージとでも云うべき、作品群を見ていると、この人の作品はシュールレアリズムで、ありえない世界を描いているわけなんだけど、どれも妙に現実感を伴っているんですよね。シュールレアリズムなのに現実的。ダリが描いている世界はファンタジーでは決してない。そこが面白いと思った。
実際にそんなことが起こりえるのか、誰もが想像するけど、敢えて絵にすべきことでもないようなことを描いている。実際に存在するものがその物質としての本来もつべき、形状や質感、常識を覆してしまう。当たり前だと思っていたものが、ある日目の前でいともたやすく覆ってしまう、そんなことが僕らにはおうおうにしてあります。ダリの絵にはそんな社会への寓意も込められているのではないでしょうか。
ところで、ダリと比較するとなると、すぐに同じくスペインの天才として真っ先に浮かぶのがピカソですが、天才の定義づけって一体なんだろう、そんなこともこの美術展を見ていてふと感じました。より多くの優れた作品を残すこと?幅広いジャンル、スタイルの絵画を描くこと?技術が卓越していること?唯一無二の世界を描けること?その答えは結局わかりませんが、ダリとピカソ、そして藤田、この3人の天才が同じ時代を生きていたと思うとなんだか興奮します。
ダリとピカソの天才性は似ているけど、ピカソが晩年、幼児的な絵画に画風を変えるというのは懐疑主義的というか、後退的な感じなのに対し、ダリは常に最新の科学を作品に吸収していったのは進歩的な感じがします。でもどちらが天才というのは僕には云えないですね。ただダリとピカソを比較してみるのは面白いと思った。

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↑ダリの絵で見たことがなかった絵の中ではこの「奇妙なものたち」が強烈に焼きついています。赤と濃紺の色彩の強烈なコントラスト、ダリのほかの絵画に見られる象徴的なモチーフ(溶けた時計、パン、ピアノ、引き出しなど。)をふんだんに配し、見事に淫靡な怪しさと美しさの危険なバランスを醸し出すことに成功しています。更には1枚ものの絵の中に様々な痕跡を残すことによって、見る側に様々なストーリーを想像させる工夫をしています。イスに残る人影や、ドアの開きかけのファスナー、何が覆ってあるかめくってみたくなるモコモコ蠢いている布など、ダリが心理学を巧みに利用しているのも伺えます。

kioku.jpg

↑「記憶の固執の崩壊」。「記憶の固執」は見たことがある人も、こっちの崩壊バージョンは見たことがない人が多いのではないかと思います。これは原子核の発展を絵画に取り込んだ作品。この絵を見ていて考えていたのは、ロシアの人体実験。冷戦時代にロシアは瞬間移動の実験をしたという噂があります。原子を分解させ、再び元に戻すというものですが、失敗し、下半身のみ出ている状態で、上半身は壁と同化したとかグロい話を聞いたのを思い出しました。あと「キューブ」や「ザ・セル」って映画だとか、もろこの絵のイメージですよね。ダリが後世に残した影響って計り知れないと思います。

他にも素晴らしい作品はたくさんありました。「早春の日々」「手(良心の呵責)」「秋のパズル」「愛情を表す2切れのパン」「生きている静物」「世界教会会議」など、どれも捨てがたい傑作揃いでした。
「世界教会会議」を見るといつも胸が痛くなるのですが、ダリのガラに対する愛情はどこか神格化していて一方的なもので、高村光太郎の智恵子に対する愛情と似ています。ダリの幼少期から続く報われない不遇な愛の遍歴がこの狂った天才的な世界を生み出したと思うと、画家の中では成功したダリと云えども常に孤独で幸せとは云いがたいなあ、なんて思ってしまいます。
ところで、今回の美術展、鑑賞者の感想がレベルの低いのが多かったなあ。絵を見ながら、ほかのお客さんの声に耳を澄ましてると、皆一様に、これは何を描いてて、こういう意味で、っていう見方しかできないんですよね。日本人特有なのかもしれないけど、ものがあったとすると、それが自分の理解できないものだと、あいまいなまま受け入れることができないみたいなんですよね。あげく意味がわからないとイライラして連れに八つ当たりしてる人までいました。皆頭で考えちゃって、感じる見方ができないんですよ。神経質で職人気質なのが日本人。技の細かさとか技術を見るのは得意なんだけど(ついでに人情や風情にもめがない。だから印象派は定着する。)、芸術方面はからきし向いてない。まあこれだけ混んでる美術展で、難問ふっかけるようなダリの絵、しかもその絵には答えなんかないわけで、本当はあまり大衆向けではないんですよね。ダリって。でもあれだけメディアで取り上げられたから普段絵を見慣れてないような人まで来ちゃう。それは美術の発展として悪くないけど、なんだかなあって思っちゃいました。とりあえず付き合いたてのカップルとかファミリーには目を覆いたくなるであろう作品もたくさんあったし、その辺はどうなんでしょうね。

P.S 同期にブンカムラで開催されてるエッシャーとも何か偶然ではない関連性を感じます。ダリのダブルイメージなんてまさしくトリックアートのそれだし。僕的にはエッシャーよりこっちでした。

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  1. 2007/01/03(水) 21:11:20|
  2. 美術展|
  3. トラックバック:5|
  4. コメント:11
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コメント

TBありがとうございます

はじめまして。TBありがとうございました♪
いやはや、混んでいたようですね(汗)。。。お疲れ様でした。
TB、こちらからもさせていただきますね!
  1. 2007/01/14(日) 14:04:41 |
  2. URL |
  3. らいら #JalddpaA
  4. [ 編集]

TB&コメントありがとうございます。

はじめまして。TBとコメントありがとうございます!
らいらさんの行かれた時はすごくすいていたようですね。
僕の時は写真を見ればわかるように、ものすごいことになってました。
美術館は計画的に下見してから行くものですね。
ゾウのウンチで作ったノート、僕もほしいです(笑)。
  1. 2007/01/14(日) 18:27:51 |
  2. URL |
  3. 秋山亜軌(管理人) #SecOoZh.
  4. [ 編集]

初めまして

TBありがとうございます。レポート大変面白く拝見致しました。90分待ちだったとは、、、!エッシャーもそうとう混んでいたみたいですが。こちらからもTBさせて頂きました。
  1. 2007/01/14(日) 23:14:02 |
  2. URL |
  3. kurohani #-
  4. [ 編集]

はじめまして。

kurohaniさん、TBとコメントありがとうございます。
めちゃくちゃ混んでましたよ。おそらく1番混んでいるときに行ってしまったのではないかと。
大きな作品がけっこうあったのが救いでした。そういえばアインシュタインの風貌もダリと似てますよね。
  1. 2007/01/15(月) 22:07:23 |
  2. URL |
  3. 秋山亜軌(管理人) #SecOoZh.
  4. [ 編集]

ダリ回顧展

はじめまして。TBありがとうございました。1/2は12時前から並び、120分まちでかなり混雑していましたね!でも気候もよく待ったのも実際は1時間くらいで入れたので良かったです。あのスペースで中に2時間半ほどいたので出たときはふらふらでしたが、ダリにはまって見ていましたね!私も奇妙なものたち?この作品、私も興味深く目に焼きついていますよ!
  1. 2007/01/17(水) 01:03:24 |
  2. URL |
  3. たけこ #-
  4. [ 編集]

TBありがとうございます!

これからフィゲラスのダリ博物館のブログ、アップ予定です。
アップしたらTB入れさせて頂きますね~♪
  1. 2007/01/17(水) 09:47:03 |
  2. URL |
  3. kokomo #-
  4. [ 編集]

はじめまして。

たけこさん、kokomoさん、はじめまして。
TBとコメントありがとうございます。
たけこさん、120分ですか。上には上がいるものですね。「奇妙なものたち」は本当に強烈な絵でしたね。印刷では出ないくらい鮮やかなコントラストとあの世界観にはびっくりさせられました。僕もふらふらだったけど、とても充実した気分をあじわえました。スペイン旅行行けるといいですね。
kokomoさん、ダリのヒゲは宇宙人と交信するためのものだったんですか、さすがシュールレアリストらしい回答ですね。スペインに行ってダリが見られるなんてうらやましい限りです。スペインにはガウディ、ピカソ、グレコと素晴らしい芸術家の遺産がたくさん残ってるので満喫してきて下さい。TB楽しみにしてます。
  1. 2007/01/18(木) 01:38:32 |
  2. URL |
  3. 秋山亜軌(管理人) #SecOoZh.
  4. [ 編集]

また遊びにこさせていただきますね。絵をかかれていたのでとても詳しく解説されていますね。私は全く知らなかったのですが、旅行が好きなのでこれから美術館めぐりにも時間をかけた旅にいきたくなりました♪
  1. 2007/01/19(金) 00:34:37 |
  2. URL |
  3. たけこ #-
  4. [ 編集]

たけこさん

こんばんわ。そうなんです。自分でも絵を描いてます。忘れっぽくて、美術館に行っても頭から流れていっちゃう気がして、せっかくブログをやっているので書き留めておくようにしております(笑)。今では美術館に行ったらブログに残しておかないと気持ち悪くて眠れないくらい。
旅行はいいですよね。その国の空気、その美術館の雰囲気で見る絵というのはまた違った見え方がすると思います。日本みたいに学芸員に細かく監視されることもないでしょうし、あんな混みこみにもならずにゆったり見られるだろうし、壁画のような持ち運びのきかないものは、その国でしか見られないっていう魅力があると思います。
これからもどうぞ宜しくお願いします。
旅の楽しいお話聞かせて下さいね。それでは。
  1. 2007/01/20(土) 23:57:53 |
  2. URL |
  3. 秋山亜軌(管理人) #SecOoZh.
  4. [ 編集]

TBありがとうございました

だいぶ以前にTBしていただいてましたのに、
お返しするのが遅くなり申し訳ありませんでした。

ブッとんだ前衛的な画家と思われがちなダリですが、
「先人へのリスペクト」の部分にしっかり光を
当ててくれていたのが嬉しい展示企画でした。
(死んだ兄や父親など、身近な人物に対しては
 そういった感情が「コンプレックス」となり、
 フェルメールなどに対しては「リスペクト」と
 なるのが「人間・ダリ」の興味深いところです)

『パン籠』は私も大好きな作品です。
中学校の美術の資料集に載ってたのかな?
パンと籠だけなのに、質感がなんだかぬめっとして
エロティックだったのが印象的です。
いま気づいたのですが、
キリストの聖体パンも連想させますね。

では、失礼します。
  1. 2007/02/01(木) 13:39:08 |
  2. URL |
  3. 紫式子 #IY7bLZJE
  4. [ 編集]

紫式子さん。

紫式子さん、はじめまして。TBとコメントありがとうございました。
ブログの方も拝見しました。着眼点が鋭くてお詳しいですね。文学もお好きなようなので、そのせいか、とても感性にあふれた瑞々しさを感じました。
「パン籠」を生で見たのは初めてでしたが、ずっと昔から見たいと思っていました。ダリの中では、ああいったいわゆる正統派の絵の方が希少なので、見られてとても嬉しかったです。
静物といえども普通の静物ではない、すさまじさを感じる絵です。宗教的な観念を持ち合わせ、様々な想像を喚起させる。
何を描いても、普通ではない。そういう意味で、ダリは生粋のシュールレアリストと云えるかも知れませんね。
しかし、どんな天才も1人の人間である。泣き笑いし、弱い部分もちゃんとあって。自分とそう遠くない存在なんだ。そういう側面も充分に見せてくれる美術展だったと思います。
たまに、そちらにもお邪魔させて頂きますね。これからも宜しくお願いします。
  1. 2007/02/06(火) 22:00:04 |
  2. URL |
  3. 秋山亜軌(管理人) #SecOoZh.
  4. [ 編集]

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